
我々がまだ小学生だった頃は、世の中にあるカタカナはコーヒーとチョコレートくらいだったのだが、最近の自分がイケていると思い込んでいるビジネスマン(もしくは自分のことをマークザッカーバーグだと思い込んでいる平社員)は、日本語を忘れたかのように横文字を使いたがる。
私は20年間以上日本で過ごした純日本製の極右保守日本人なので、このような無意味な横文字を使うことには抵抗感がある。彼らは箸の使い方を忘れてしまったのだろうか。ベッドルームまで土足で踏み込む文化だっただろうか。そうではないはずだ。
彼らの価値基準は、グローバルチェーンで買えるトールのコーヒーであり、その人生の価値は死ぬまでに口にした横文字の数で決まる。我々のような一般的な日本人には理解できないかもしれないが、私が彼らを観察して出した結論だ。
もちろん、日本語に適切な単語がない横文字もあるのだが、彼らは何故か適切な日本語があるにもかかわらず横文字を使用することによって他のまともな日本人に意味不明な言語をまくし立てることを好む。彼らが好きなのは建設的な議論ではなく、言葉のマシンガンで標的を蜂の巣にすることだ。50口径のマシンガンで蜂の巣にされて仕舞えば、何について議論していたのか、何のために議論していたのかを忘れて、威圧的な相手に負け条件を飲んでしまいがちになる。それこそ彼らの目的なのだ。本質的にはベトコンで精神を病んでしまった兵士たちと同じだ。
そしてこれが今回レビューするシェイクスフードの話に繋がる。シェイクスフードは、シマノのSTIに対応するブラケットカバーであり、今まで注目されることのなかったブラケットのカバー部分に焦点を当てた商品だ。自転車と身体の境界であるサドルやハンドルには数多くの種類があるが、今までブラケットカバーを選ぶという選択肢は無かった。画期的な商品だ。
しかしながら、この商品には致命的な欠点がある。「この商品には致命的な欠点がある」という言葉は少し正しくない。正しくは、この製品を売り出そうとしている団体には少し問題がある。それでは、問題の商品の公式サイトについて説明しよう。
この製品の公式サイトは、何故か日本語が堪能でない広告部門の人間によって書かれている。日本語に適切な言葉があるにも限らず無駄に横文字を使い、そもそも文章に意味はない。何やら長い文章と横文字でごまかしているが、私が要約すれば次の一文で済む。
「これは、日本で作られているため、製造コストが少しかさむが、製品管理がベトナムよりマシなサードパーティのブラケットカバーだ。」
私の予想では、このウェブサイトを担当したのは日本語勉強歴が2, 3年のスペインの大学生だろう。4,5分製品のうたい文句を考えてから昼寝をして、このページに30日ほどは掛けたに違いない。恐らくは、論理学についても全くの素人であることも容易に予測がつく。きっとシェイクスフードの広告部門は、ディーゼル燃料がホッキョクグマを殺していると信じている環境保護団体と同じ学校で論理学を学んだのだろう。
2, 3分もこのサイトを読んでいると、あまりに意味不明な横文字や因果関係がめちゃくちゃな文章のせいで眼前にサイケデリックな景色が見えてくる。そしてLSDの幻覚から解放されると、自分が何を読んでいたのか、何のために読んでいたのかを忘れてしまう。そして論破された気分でこの商品を購入することになる。
私が購入したのは黒のカバーだ。自転車のパーツには無駄な差し色を使わず、シンプルな色で構成した方がより洗練された感じに見える。カラフルであることが優れているのはプログレッシブロックのライブくらいなので、我々が日常的に身に付けるものはシンプルな色にすべきだ。考えてみて欲しい。もし自分の命を託すとしたら、黒のジャガーに乗ったリーアム・ニーソンか、目が焼け付くような色のマスタングに乗ったシルベスタ・スタローンか。私なら前者だ。
裏を見ると、純正のブラケットカバーよりも内側の表面の加工精度が高いことが分かる。しかしながら、こんな些細なことにこだわる人が何処にいるのだろうか。
「見てみろよ、俺の車。ボンネットの裏側がピカピカなんだぜ。」と自慢する人間なんて見たことがない。
肉厚が純正のものよりも少し薄いことにより、ブラケット全体の大きさが小さく感じられる点はポイントが高い。特に、手の小さなアジア人や、Di2シリーズの握り心地が好きな人は間違いなくこのシェイクスフードを気にいるはずだ。私もこの点だけでこの商品を好きになってしまった。
しかしながら、公式サイトの残念な日本語意外にも、皆さんに告げなければならない残念な点がある。それは、シェイクスフードブラケットが純正の約3倍の価格がすることだ。全く速さに影響がないであろうパーツにプラス2000円を掛けるかどうかと問われると、みなさんの答えは間違いなくNOだろう。
だが、こう考えて欲しい。シェイクスフードは、いい店で仕立てたジャストサイズのツイードジャケットだと。量販店で売られている安物のジャケットを着ている時と比較しても、パブで口説ける女性の数が増えるわけではない。実際的には何も意味をなさない。しかし、一度仕立てられたジャケットの着心地を覚えてしまうと、それが少し(3倍は少しだ)高くとも、全く実際的な意味がなくとも、手放したくなくなるものだ。
シェイクスフードは、実際的には何の意味もなくて、ただ高くて、それでいてしっくりくる換えの効かない素晴らしいプロダクトだ。私はアグリーせざるを得ない。