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【オーストラリアハーフラウンド 4日目 さらばケアンズ】
前日に続き退屈な移動日の執筆を続けるとしよう。
◆バス移動 ケアンズ - マッカイ
昨日ケアンズを発った私は、午前の12時を回ってもまだマッカイには着かずにいた。すでに12時間だぞ。12時間。飛行機で換算すると、成田からロンドンヒースロー空港あたりまで行けてしまう時間ではないか。にも拘らず私がいたのはマッカイから約200㎞程手前のエアリービーチ。何らかの要因によって物理法則が捻じ曲げられているとしか思えない。もしくは、時間は相対的なので、これまた何らかの要因によって時間が引き延ばされているのかもしれない。

時間とオシリの疲労さえ無視すればバス旅は快適だ。飛行機でする点と点の旅では出会えないような、思いもよらない景色に出会えたりするし、やはり陸路での旅は何か言葉では言い表せない不思議な魅力に溢れている。やはり私は陸に魂を縛り付けれているオールドタイプだ。宇宙(そら)に行けるタイプではない。
バス移動の間は基本的に寝て過ごしているのだが、起きてからは景色を眺めて時間をつぶしていた。持ってきた文庫本も昨日読み切ってしまったことだし。オーストラリアの景色というものは、2,3分見ているだけなら非常に素晴らしいのだが、10分以上見ていると、無限に続く平野を眺めなければいけない拷問にかけられているようにも感じる。それもオシリを壊されながら。スコットランドと砂漠を合わせたような景色が延々と続いている。
マッカイに着くと、これまた何とも言えないくらいの街の規模で、ケアンズを1/3くらいに弱体化させたような街だった。不便はしないが便利でもない。前の記事でも書いたが、マッカイに寄ったのはバス旅が長くなりすぎると本格的にオシリが壊れるためだ。観光情報なんて知らない(それほど有名なものもないはず…)。海外旅行疲れもあるので、とりあえず一泊寝て回復し、明日の昼に出るバスに乗るだけ。バスを降りてホステルに直行し、チェックインを済ませると14時間のバス旅疲れですぐ寝てしまった。

悲劇は夕方に起こる。16時くらいに昼寝から目覚め、ベッドにねそべりながらスマホをいじっていると、枕元に何かが落ちてきた音がした。
「ボトッ」
ベッドのネジか何か小物が落ちたのだと思い、ベッドの枕もとを見ると黒く輝く何かが蠢いていた。察しのいい読者諸君ならお気づきだろう。私が見たものは、その気色悪さだけで、他に何の害も及ぼさないにも限らず日本人の嫌いな虫ワーストワンに上り詰めたエリート虫、ゴキブリだった。しかも超デカイ。キモすぎるので触ってはいないが、たぶん私の親指と同じくらいの大きさはあったはずだ。私が小学生の頃捕まえた超デカイカブトムシより絶対大きかった。キモすぎて焦っていたので、写真は無いが本当にそれくらいだった。想像してほしい、超デカイゴキブリを目の前にして、のんきに写真撮影なんてできないだろう。驚いた私は次のような声をあげた。
「ぎゃああ。」
ちょうど屈強そうなエジプト人がルームメイトだったので、彼に助けを求めてなんとか窮地を脱することができた。彼はゴキブリを手でつまんで外に逃がしていた。正気とは思えない。強すぎる。
残念ながら、この日はゴキブリくらいしか語ることがない。旅をしてみればわかるが、旅のうち8割の時間は退屈だ。残りの2割は最高に興奮している状態だが、以外に退屈な時間が多いものだ。登山だって登っている時間は退屈で、山頂に着いた瞬間だけが心躍る。旅は劇的ではない。退屈な時間がほとんどを占めているのに、なぜだかまた旅に出たくなる。

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【オーストラリアハーフラウンド 6日目 ブリスベンへ】