【サロベツ100マイルロードレース2019 S-3】2日目 ロードレース チーム戦略のすゝめ【リザルト:1位】

【サロベツ100マイルロードレース2019 S-3】2日目 ロードレース チーム戦略のすゝめ【リザルト:1位】

2019年7月23日 0 投稿者: Takuya M

学問のすゝめ – wikipedia

こんにちは。VOLTA RACING FACTORYのマツハシです。

7月21日に開催されたサロベツ100マイルロードレースに参加してきました。レースにあたっての準備、戦略考察、パワーデータ、感想等を書きます。

前日分のタイムトライアルの記事でも書きましたが、

私は地脚があまりある方では無いので、いかに無駄を消してクレバーに走るかという点に焦点を当てています。私よりパワーが出せるライダーはS3クラスに沢山いるはずです。そんな中で私が勝てるとすれば、いかに自分の得意な分野に持ち込んで、勝負どころまで無なだことをせずその一点でパワーを開放できるかという点です。前置きは置いておいて、本論に入りましょう。

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・準備編

(1)機材

機材は前日と同じコラテック・R.T.Carbon。ちょっと設計が1世代前な感じがするフレームです。これと言って特異なセッティングは無し。オーソドックスに組み上げています。

(2)食事・補給

S-3クラスのレースでは、レース全体で消費するカロリーがおそらく1000kcal前後。この程度であれば、朝食を超大量にたべたり、前日から沢山食べたりという必要はありません。朝食には、プリン(栄養学的なメリットは知りません。好物なので。)、バナナ2本、フルーツジューズ、おにぎり2個をたべました。レース中にガスが溜まるので食物繊維が豊富すぎる食べ物は摂っていません。また、レース直前に合法ドーピングアイテム、スーパーVAAMを補給。うちのチームはみんな飲んでから出走します。

補給については、CCDドリンク2本分以外無し。ボトル1本で出走する方もいましたが、流石にこの炎天下で500mlだけは厳しいでしょう… 水分が抜けると身体のパフォーマンスも著しく低下しますから。

・戦略編

今まで数回このレースに出た経験から、予想されるレース運びは以下のとおり。

(1)序盤
逃げの形成。集団の安定化。

(2)中盤
逃げの吸収。フィニッシュに向けての集団の活性化。

(3)終盤
終盤でのアタックによる逃げ切り。本命は集団スプリント。

これに対して我々のチームで考えられる勝ちのパターン(我々が持っているカード)は以下のとおりです。

・集団スプリントでマツハシが勝負。(スプリントには自信あり。確率は最も高い。)
・ラスト数キロの地点でアタック。逃げ切り or 小集団マッチスプリント。(前日のTTで上位タイムを出していることから、うまく抜け出せれば逃げ切りも可能。スプリントには自信あり。)
・序盤の逃げに乗ったライダーが逃げ集団の中で勝負。(飽くまで可能性。不確定要素が大きく、好ましい状況ではない。)

起こりうる確率はやはり集団スプリントが濃厚です。ただ、集団スプリントに備えて単騎選手同士が脚を休めている隙にアタックして、後ろが消極的な動きになれば逃げ切りの可能性もなくはありません。最後の選択肢はあくまで可能性です。終盤までに逃げが吸収されている状況がうちとしては最も好ましい状況でした。私の得意なパワーレンジは10分未満の高出力ですので、長時間に及ぶ長い逃げはあまり得策とは考えませんでした。長い逃げであれば、あタックのタイミングであまり脚を使わずとも逃してくれる確率が高いのですが、その後に高出力を維持しなければならないというデメリットと天秤に掛けると、しないという結論に至りました。

VOLTAチームからの出走は3名。数的有利を生かして私の脚を溜め、終盤でアタックをする作戦でした。チームメイトに出したオーダーは大雑把に(実際にはもっと細かいですが)以下のとおり。

出走前。3人いると戦略の立て方が違う。

Phase 1:強力そうな逃げ集団が形成されそうであれば、誰かが逃げに乗る or 逃さない。
Phase 2:タイム差を2分以上開かないようにコントロール。先頭集団(うちのチームから逃げに一人以上入っていれば)、メイン集団も逃げを潰す動きをする。登りでは少しペースアップをして、重いライダーを落とす(集団を小さくして牽引力削減、リスク回避)。
Phase 3:私がアタック。集団に残ったライダーはブロッキング。アタックが決まらなければ集団スプリントに向けて準備。

4,5人の有力な逃げが形成されたとしても、一人逃げに乗っていれば状況としては悪くありません。道も広く、難しいコーナーもなく、平地ライクな地形なので基本的には集団が有利です。逃げたいライダーは何人もいるでしょうから、とりあえず脅威でない逃げを見送って集団の中で休み、ラスト1周で決定的な逃げを打つ予定でした。

チームで意識しようと呼びかけていたのは、とにかく無駄足を使わず、きちんと水分を補給してクレバーに走ること。

また、アタックを予定していた場所は以下のとおり。薄い赤矢印は当日の風です。(結果的にはうまくいきませんでしたが。)

コーナーまたはカーブで風向きが変わり、横風もしくは追い風であるため、向かい風区間で加速するよりも風を受ける先頭の不利要素が薄まります。

また、レース開始直後に逃げを追ったり、乗ったりというハードワークが予想されたので、チームメイトには入念にアップを行うよう促していました。結果的にこれは必須のものであったと考えられます。

・レース展開

スタートは比較的穏やか。0kmアタックを決める選手も居なかったようです。スタートしてから5kmほどで抜け出したそうなライダーがアタックを仕掛けるも、逃してもらえず。我々もミーティングどおり逃したくない選手が逃げそうになったら潰す動きをしました。9km地点の小さな登りで、前日TTで優勝した輪駄の吉村選手がペースアップ

「これは逃したくない。」と思いながらワンテンポ遅れて追う動きをするも、2名の逃げが形成され先行される。ただ、如何に強力な選手といえでもこのコースで集団から2名で逃げ切るのは容易では無いはずなので、見送っても良いという判断をした。

メイン集団先頭で周囲の人に「2分以上差がつかないように回しましょう。」と提案するも、逃がしたくない人が居たようで集団のペースは下がらず2名を追う展開に。2名くらい逃していいじゃない…。集団はもう一度レースを振り出しに戻して、別の逃げを形成したいらしい。確かに、単騎参加の選手からすると逃げに乗るメリットは大きい。数的有利なチームが逃げにいると、単騎選手が追わなければならなくなり、逃げにライダーを送り込んだチームはメイン集団でかなり楽をできる。ラストのスプリントでもリードアウトがいるのと居ないのでは埋めがたい差が着く。

「みんな逃げたいのかな?」と思いつつローテには加わらない。うちのチームとしては引く理由が無い(寧ろ逃げを行かせて集団を安定化させたい)ので。とはいっても、まあまあペースは上がっていたので登りでチームメイトが一人ちぎれてしまった。準備編で書いたが、やはりアップは必須であった。

逃げを吸収するタイミングでまたアタックする人がいそうなので、そのタイミングまでには集団前方に位置取りして逃したくない選手をマーク。ただ、逃げを吸収しても逃げを打つ選手は居ない。さっきの追走は何だったんだ…?

2周目の平坦区間では逃げが出ることがなく、比較的ゆっくりペースで推移していった。このあたりは談笑しながら走れるペース。関係ないけど隣の人のバイクがかっこよかった。

その後の32km地点あたりの登りで、輪駄吉村選手がペースアップ。前の周回から逃げたそうにうずうずしていたのを見逃さなかったので、マークしていた。ついていくのは私だけ。逃げるのがかなり早い段階だとは思いつつ、前日のTTワンツーで逃げれば相当良いところにいけるんじゃないかと思いフルガスで逃げる動きをする。登り終わりあたりでもうひとり加わり、逃げは3名に。

登りのあとの平坦区間はゆるく下るストレート。圧倒的に集団が有利だが、ここさえ踏ん張ってしまえばその後のゆるい上り区間ではそれほど差は縮まらないだろうと考えてローテを回すが、集団は逃してくれる気配がない。まだまだレースは長いんだから逃してもいいじゃない…(希望的観測)

たしかに、前日のTT1位2位をみすみす逃がすという真似は私ならしない。

この光景を見れば逃しちゃいけない2名だということはわかる。

結局10分ほど逃げた段階で集団につかまり、幸運なことにカウンターアタックは出ず。逃げでかなり消耗したので、ここからラストの10kmまでは集団内で回復に徹する。ここでチームメイトのイシザキが残っていてかなり救われた。

もうひとり居れば、不意のアタックにも対応できる(その時の私にはアタックに対応する脚はなかった。)し、最後の局面でリードアウトも可能だ。

ラスト10km地点あたりで、チームメイトのイシザキに「前に位置取ってくれ」とハンドサインをする。短い上り区間でもアタックは出ず(ペースアップはあったものの)、集団は団子状態のままラスト5kmに突入した。本来であればこのあたりでアタックする予定だったが、前述の逃げの動きで脚を使っていたのでキレのあるアタックをすることは出来ず。

ラスト3kmの向かい風区間に突入したあたりで、「これは集団スプリントだな。」と判断。チームメイトイシザキの後ろで集団スプリントに向けて備えることにした。

この写真が撮影された直後に事件が起こる…

ラスト1.8kmあたりで、目の前で走るリードアウト役のイシザキがなんと北大の選手と接触…

両名バランスを崩すも、落車はなかった模様。ただ、そのせいでイシザキは数十メートル後方に遅れてしまったようで、リードアウトはその時点で不可能になる。私は咄嗟に回避して前から6人目程のあたりでラスト1kmを迎える。

ラスト300mの登り返しが始まる地点では4番手。前の選手にタダ乗りしつつ、スプリント開始のタイミングを待つ。ラストは上り勾配なので、あまり早駆けしすぎるとラストで失速してしまう。

登り返しから一呼吸おいて、残り150mあたりでスプリント開始。少し早いと思ったが、これ以上待っていると集団に埋もれてしまいそうだったので掛けるしかなかった。

足の調子が良かったので、最後まで前を譲らず踏み切ることが出来た。イエーーース!!!!!

チームワークの勝利!

スプリントで5位でフィニッシュした山下選手から動画を頂いたので掲載します。トップの2名が抜け出しています。

後ろでガッツポーツをするイシザキがメインの動画?

・パワーデータ

全体的なパワーデータはStravaのデータを参照してください。出走時の体重は61.5kg。

レース中の主要な登り(といっても短いが…)で出していたパワーは以下のとおり。

10km地点の登り。1分320W
11km地点の登り。2分半240W。だいたいFTPです。

とても高いパワーが出ていたわけではない。

2周目の登りでは、吉村選手と逃げるために踏んでいたので500W(8.30PWR)近いパワーが十数秒出ている。その後も、360w(5.82PWR)前後で集団に差を縮められないように踏んでいる。このパワーが出れば、S3では集団から抜け出せると言えそうだ。

2分半280Wだが…
登りの中盤では500W以上のパワーを出している。
500Wを出して吉村選手の動きについていった後、300W後半で速度を維持している。

ラストの5km区間(10分ほどだろうか)では、500W(8.30PWR)を超えるパワーが十数回に渡って出されている。ラストのスプリントに混ざりたければ、30秒に1回500W以上を連発できる回復力が必要だ。

ラストのスプリントは約12秒間であった。一気にMAXパワーの1086W(17.40PWR)まで上げて、フィニッシュラインを切るあたりでは900W(14.42PWR)出ている。

スプリント開始
開始直後にマックスパワー。
フィニッシュライン通過時のパワー。

スプリントでは位置取りに依るところが大きいので、一概にパワーだけでは言えないが、このくらいのパワーが出ていればS3で集団スプリントに絡むことができると言えそうだ。

・感想

今回はチーム3名でのチームでの動きが可能だったため、終始脚を使わず終盤に備えることが出来た。中盤の逃げては脚を使ったものの、その後にチームメイトの後ろで十分に休む時間があったので終盤の動きおよびスプリントに対応できた。これは僕がスプリントで勝ったのではなく、集団で有利に展開を進め、集団スプリントに持ち込んだチームの勝利だった。

個人的には、中盤で輪駄・吉村選手が動いたあたりで「この逃げに乗って、小集団逃げ切りマッチスプリントになったら一番胸が熱くなる展開だ!」と思ったが、逃げ集団の脚不足(周りの表情を見る限り3名皆辛かったと思う。)と集団の展開により逃げることが出来なかった。それでも強い選手と逃げることが出来た瞬間はとても楽しかった。

個人的に気になったのが、数的有利を抱えながらレースを支配しようとするチームが居なかったことと、後手後手に回って無駄足を使わされていた単騎の選手が気になった。去年は、終盤で北大の選手が逃げに乗り、後ろの集団ではうまくブロッキングするという立ち回りをされてかなり脚を使わされた。今回はそのような組織だった動きをするチームは目立たなかった。

また、集団では平地で「意味のない引き」をして無駄足を使っている単騎選手が多かったように思われる。平地で引く理由というのは、今回の平地レースで言えば、逃げに追いつきたいか、逃げを出さないくらいのペースに持ち込みたいかのどちらかしか無い。利害関係や引く理由というものを明確に意識しないまま走っているのかな、という印象を受けた。