相変わらず台北には雨が降り続いていた。どうか青空の下で自転車に乗りたい。ここ2日間ずっと太陽が顔をだすことはなく、灰色の空しか拝めていない。北海道には梅雨がないのだが、梅雨の時期の本州はこんな雰囲気なのだろうか。
結局この日も自転車に乗らぬまま、リミットの3日を終えて自転車を返しに行くことにした。
バイクを返しに行くと、一人の店員さんが出迎えてくれた。営業時間を見落としていて、お昼の12時頃に返しに行ってしまったのだが、店員さんの好意で開店時間の1時まで店内待たせてもらえた。
面白いことに、その店員さんは日本語が話せた。かつて大阪で日本語を勉強していたらしい。
「タクヤさん、お昼ご飯、一緒に、行くか?(原文ママ)」と店員さんに誘われたので、イエスマンである私はついていくことにした。地元の人が行く食堂、それだけでなんだか美味しそうな雰囲気が漂う。

自転車屋さんから5分ほど歩いた先にその食堂はあった。一言で言うなら、「きたなウマイ食堂」と言った風貌だ。お店は賑わっていて、相席が基本のようだ。どこに座っても格安空港のシートより狭い。だが、ウマイ食事を食べるためだけならこれで十分だ。手の混んだ外装や座り心地のいい椅子なんて必要ない。
自転車店員のおすすめで、排骨飯を頼んだ。「スープも最高だよ!」と言っていたのでスープも頼んだ。イエスマンだ。

待っていると、いや、待っているという表現は正しくない。電子レンジで回答された冷凍食品を提供しているチェーン店よりも早く食事が提供される。正直な所、1分待ったか怪しい。
うーん。いい匂い。
画像では見えないが、肉の下に海老天のようなものが入っている。これにカラシをつけてご飯と一緒に食べると、最高という言葉以外は言えなくなる。ついでにビールも飲みたくなる。
スープには魚やエビのすり身が入っている。ダシ?の濃度がとんでもなく高くて、美味しい。アルコールを飲んだあとに飲みたくなる味だ…
食事をとったあと、日本で一度一緒に働いていた台湾の友人とドライブをすることになっていた。自前の車を運転していいことになっていたので、レンタカーを予約しなくてもいい。ラッキー!しかも乗れる車はミニ・クーパーだ。

ミニクーパーはかなり愛された車で、一部の頭が悪い男を除きすべての人間に愛された。目のようなヘッドランプと丸まったボディが女性に人気だが、その骨にはレーシングカーとしてのバックグラウンドの精神が眠っている。見た目は可愛いかもしれないが、ボンネットの下には疲れることのない筋肉が眠っている。
ネイルサロンに通う女性であっても、ミニを所有する理由は、ミニがラリー・モンテカルロで優勝したことを本能で知っているからだ。最速を競うスピリットを感じるからだ。
町中で待ち合わせて、台北から車で約1時間の野柳国立公園に向かった。
ここには”クイーンズヘッド”と呼ばれる奇岩がある。女王の頭と言っても、私にとってはエリンギか、腸詰めに失敗したウインナーにしか見えなかったが。
土砂降りだと笑顔も曇る。記念撮影は100%の笑顔が基本だが、この日は55%くらいだろうか…

ともかく、ミニでのドライブは最高だった。馬力が50ほど足りない気がするが、英国からの(たとえエンジニアリングはドイツだとしても…)精神が伝わってきていい気分になる。