台北3日目の起床は少々慌ただしいものであった。というのも、この日は台北市内から台湾人の友人のお父さんの車を借りて台湾東海岸の街にワイアオ(外澳)に向けて出発するためだ。前日までの台湾の交通量にすこし、いや、かなりビビっていたので、ルートを確認したり、台湾の交通ルールをネットで調べるために少し早起きをする必要があった。だって、台湾の道路状況はツール・ド・フランスのコミッセールカーの周りのような感じといえばわかりやすいだろうか。

普通に電車を利用して旅行していれば気づくことはないだろうが、ひとたび台北の道路に出れば死にたいとしか思えないスクーターの大群と、スクーターを殺したいとしか思えないバスの運転手の苛烈なバトルがあちこちで繰り広げられていることが容易に認識できる。中立地帯はどこか、私は平和主義である。台湾人の友人に、「もし私が人を殺しちゃったら…?」と訊いたのたが、「大丈夫、大丈夫だよ。」と窘められた。パニック症状に陥った人間を落ち着かせるときに言う言葉のようではないか。私はパニックなど起こしていない。
心を決めて、タイワニーズパパの巨大な車を駆ることにした。
まずは、右側通行になれるのに数分はかかる。頭ではわかっていても、今までの慣習どおり左側に寄りたいという気持ちが常にあるので、大脳新皮質と大脳辺縁系が主導権争いをしている感じが常に頭の中にある。思えば、海外で車を運転した経験はあれど、右側通行の国に来るのは初めてだった(今まで行った国は、面白いことにすべて左側通行、つまり英連邦諸国のみである)。意外なことに、町中のど真ん中さえ避けて通れば安楽死を望むバイカーたちもあまり見ないので、日本とほぼ同じように運転できる。

そして、更に高速道路に乗ってしまえばすべて問題はなくなる。スクーターもいないし、交差点も存在しなくなるので安心だ。これで安心してワイアオビーチまで行ける。
ワイアオビーチのホステルに到着すると、まずは荷物をおろして船が停泊する港へ向かった。
眺めは良好
そこで船を運転してくれるガイドさんと落ちあい、出港の準備にとりかかる。

キャプテンがひととおり計器やエンジンの準備をした後に、私に命令を下す。
“Bow, off!”の合図で、私が船を固定するロープを外した。

“Yes! Captain!”
船が動き出した。

面舵いっぱい!!!
クルージングのルートは、台湾本当東に浮かぶ亀山島をぐるりと一周するルートであった。海から眺めると亀の形のように見えるため、亀山島と呼ぶらしい。

戦時中は基地として利用されていた歴史があるようで、マシンガンを設置するための堀が見られたりする。また、島の近くでは硫黄が吹き出しているようで、海の色がエメラルド色になっている。

人はこれを「ティファニーブルー」と呼ぶらしい。自転車乗り的に言えば、これは「チェレステ」だ。
島をぐるっと回って港に返ってくるまでに4時間程。運動していないと言えど、日光のもとで4時間過ごしていればそこはかとなく疲れる。嗚呼、ビールが飲みたい。
宿に戻り少し休憩し、ローカルっぽさあふれる食堂に我々は向かった。美味しそうな雰囲気が漂っている。ローカルなお店はこれくらいちょっと汚いほうが美味しいと相場が決まっている。
メニューの注文は台湾人の友人に任せて、私はテーブルに座った。すると5分もしないうちに食事が運ばれてきた。台湾あるある、食事が一瞬で出てくる。チェーン店の電子レンジ調理でももっと時間がかかるだろうに。
これは絶対美味しい。食べる前に分かる。
そして台湾あるある第二弾。絶対に食べきることを想定していない量の食事が運ばれてくる。スープなんて2ガロンくらいはありそうだ。
満腹になり、程よくアルコールも入り、満足して台湾3日目を終えた。