ラーメンずんど シドニーCBD
油そば スパイシー、ライス
多くの日本人はこう思うだろう。「日本で700円($8.5)も出せば食べられるラーメンに何故大金を払わなければいけないのか」と。私も同感だ。海外で食べられる日本食といえば、味に何かが足りないのに金額は1.5倍から2倍ほどする。味も価格でも劣っているものに代金を払って食べている人がいるとしたら、それは間違いなくバカだ。このラーメンは果たして山小屋で売っている450円のカップラーメンなのだろうか、スキー場で食べられる900円のレトルトカレーなのだろうか。
以上のような偏見を持っているにもかかわらず、薬物の禁断症状というのは抑えられるものではない。ダメだと分かっていても、生活がいくら苦しくなろうとも、メスを一度吸った人間はそれなしでは生きられなくなる。高い金を払ってもう一度クリスタルメスを購入してしまう。油そばや二郎系ラーメンにも同じことが言える。海外では高純度の禁止薬物(ラーメン)が手に入りにくいので、禁断症状に苦しみながらも、私の足はシドニーで有名なラーメン屋に向かっていた。ラーメンすんとだ。
海外できちんとした油そばを食べられる場所は少ない。普通の中太麺なら比較的どこでも食べられるが、極太麺の低加水麺となれば藁の山から針を探すようなものだ。ラーメンすんとには、低加水ではないものの、私好みの極太麺が置いてある。なんとも期待が高まるではないか。
テーブルに届いたラーメンを見ると大体の作り方がわかる。ここの油そばは、極太麺の上にネギ、メンマ、もやし、細切れチャーシューを乗せて特製調味料をかければ完成だ。いかにも普通な油そばの具だが、どこにも落ち度がない。日本で生まれて育ってきたような本物感がある。そして、スパイシー版にはさらにナパームと火薬を振りかける。
一口目を口に含むと、あまりの辛さに目から出血してしまった。しかしながら、私の舌はこの麺をおいしいと認識してしまったため、大脳新皮質の判断を待たず即座に二口目に移ってしまった。一口目で視力、二口目で聴力を失ったのちにようやく脳が理解できた。このラーメンはとてつもなくうまい。きっと舌の感覚をなくすまで食べつくしてしまうであろうということも理解できた。辛味のせいでお腹を壊すと知りつつもつい口に運んでしまう。歯が黄色くなるのを知りつつもコーヒーを飲んでしまうのと同じだ。日本で食べられる多くの油そばと同様に味付けが濃いため、白米とともに食べるのが良いだろう。少しではあるが、家系の遺伝子も感じられる。
海外でラーメンを食べるために15ドルを払うのはバカのすることだったが、それは今までの話。今は食べない方がバカだ。