前日分はこちら
【オーストラリアハーフラウンド 6日目 ブリスベンへ】

早朝の便でブリスベンに到着し、いつも通りバスの降り口をくぐり抜けると、まるでバベルの塔のようにそびえ立つビル群が目に入った。オーストラリアの地を踏んでからケアンズ、マッカイという人口よりも牛の方が多いような田舎ばかりに滞在しており、はじめての都会だったので、少し興奮してしまった。我々日本人に馴染みの深いセブンイレブンもある。

セブンイレブンでは、1ドルコーヒーや2ドルのソーセージロールなどが売っていて貧乏バックパッカーには嬉しい価格設定だ。セブンイレブンで軽く朝食を済ませ、市内のボタニックガーデンに向かった。目的は昼寝だ。昼の10時ほどになるまで観光施設は開かないので、バス移動の疲れもあることだし、とにかく公園のベンチで眠って時間を潰すことにした。


ブリスベンには素晴らしいガーデンがいくつもある。数多くあるうちのガーデンの中で、私は駅前に位置するローマストリートガーデンパークが一番好きだ。寝そべって気持ちのいい芝生があるし、そこからきれいな噴水も眺められる。春(10月~)になれば、美しいジャカランダ(オーストラリア版春の風物詩)の花も咲き乱れる。高く聳えるビル群の合間にこういった美しい自然があるのは素晴らしい。札幌のようだ。大都会であるにもかかわらず、心休まる自然がそこらじゅうにある。何もない休日はコーヒーを片手に読書するだけでもリフレッシュになりそうだ。

10時ごろまで時間を潰したのち(ちなみに、英語で時間を潰すはキリングタイムと言う。物騒な話だ。)、ブリスベンの美術館が密集するエリアに足を運んだ。合計4つほどの博物館、美術館があるのだが、イギリス海軍よりも略称を沢山使っており、ひとつひとつにアルファベットの略称が設定されているため、非常にややこしくて覚えていない。AとGとOとMを使うことは覚えているが、正式名称は思い出せない… GOMA?MAGO?GAMMAGAOMMGAMOMGAOだったかもしれない。DNAの塩基配列みたいだ。

札幌テレビ塔のことをSTTなんて省略する人は見たことが無いし、グリニッジ天文台のことをOGOなんて呼ぶ人も見たことが無いのだが、オーストラリアは不思議だ。きっとクイーンビクトリアでさえもQVと略されてしまうだろう。私の名前なんてMになってしまう。私は00セクションのボスではない。
美術館と言えば、私はロンドンのナショナルギャラリー(オーストラリア風に言うなら、NGだ。)で半日を潰した人間だ。4つも美術館があるので、見学し終わるのに4日は掛かると思ったが、3時間ほどで見終わった。それほど大きくない美術館で安心した。そろそろホステルのチェックイン時間だ。毎度のことだが、バスで疲れてるので昼寝したい… ホステルに直行し、洗濯物をしてから昼寝をした。
実は、この日はある人に会う予定があった。旅行前からインスタグラムで相互フォローしていたオージーが、インスタのメッセンジャーで
「ブリスベンを案内するよ!」
と言ってくれていたので、ホイホイついていくことにしたのだ。

昼寝を終えて18時ごろに集合場所のタウンホールまで行くと、福岡ソフトバンクホークスのシャツを着た人が手を振ってやってきた… 日本ハムファイターズの敵か…?

なんとこの方、超優しい方で、アクセスの悪い観光地まで車で乗っけて行ってくれると申し出てくれた。なんて優しいんだ… ただ、その車にはなぜか阪神タイガースのステッカーが貼られていた。雑食過ぎる… そして中にはクマもんのキーホルダー… もうごった煮状態だ。
そして、少し離れた山の展望台に送ってもらった後、そのオージー(名前をジョエルさんと言う)と一緒にそのままの流れで晩御飯に!

日本が大好きな彼のススメで、スシを食べにいくことになった(寿司ではない。スシである)どうも彼は日本人にスシを食べさせたかったようだ。

運ばれてくるスシは、、、日本の寿司と比べるとオイリーで塩気のあるものばかり… だが、本物の寿司でないことに目を瞑れば、オイシイ。チーズおにぎりや、肉巻きおにぎりをおいしいと感じる人なら美味しくいただけるはずだ。私はこれを気に入った。ジョエルさんは、別の日本人の友達にもスシを振る舞ったことがあるそうなのだが、その方は
「なんか変…」
と言っていたようだ。ウマイのに。
オーストラリアでは、米の上に何かが載っていればそれをスシと呼ぶ。例えば、コメの上にチョコレートが載っていればそれはスシ。米の上にレンガが載っていてもそれはスシだ。

何故かその寿司屋ではオリオンビールが提供されていた。日本でもオリオンビールは買えるが、それほどメジャーではない。何故オーストラリアではオリオンビールがメジャーなんだ… まあいい。寿司といえば日本酒が合うが、オイリーなスシにはビールが合う。2人でビールを頼んで、日本式の「カンパイ!」をした。
「カチン!(グラスの当たる音)」
…
…
(あれ?ジョエル車で来てね?)
…
(いや、まさかな。こんな真面目そうな人が飲酒運転?オーストラリアあるあるなのか?無法地帯なのか?アナーキー・イン・オーストラリアなのか?)
と思い、恐る恐る尋ねてみると、彼はオーストラリアの素晴らしい法律について教えてくれた。なんと、アルコールは一定量までなら運転しても良いそうだ。素晴らしい。日本ならば、ドライバーは素面のまま飲み会に放り込まれ、1人だけ健常者が精神病棟に放り込まれたかのような体験をしなければならないが、オーストラリアなら軽く飲んでから買えることができる。最高だ。(勿論、一定量以上飲んで運転をすると違法になる。詳しく知りたければ自分で調べてほしい。)
寿司屋の近くの駐車場でもワイワイ会話を楽しんだ。お互い車が好きなようで、駐車場に駐車されているアストンマーチン DB9を見つけた時は2人して
「「ワオ!」」
と叫んでしまった。やはり美しい。DB9と並べられてしまうと、キーラ・ナイトレイすらも自信をなくしてしまうだろう。人類が生み出したものの中でもっとも美しい人工物を3つ挙げろと言われれば、ウエストミンスター寺院、セントポール大聖堂、そして次にアストンマーチン DB9が来る。

そして、あろうことかわざわざホステルの目の前まで車で送ってくれると言う。どんだけ優しいのあなた… そして、ジョエル氏が主催者のうちの1人を務めている語学交換クラスが翌日にあり、ぜひ来てよ!と誘われたので勿論快諾。お世辞にも英語が上手とは言えないので、恰好の機会である。ホステルの目の前でジョエル氏とバイバイした。本当にありがとう。
オーストラリア旅行始まっての素敵な出会いに感謝し、ベッドに潜った。